
自衛隊薬剤師は男性の厳しい現場ってイメージがあるけど実際はどうなの?

自衛隊薬剤師は女性でも目指すことができるよ!でも、実際入隊できるのは限られた人材だけなの。今回は、自衛隊薬剤師の年収事情やなり方を共有するね!
自衛隊薬剤師とは?

まず初めに、自衛隊で働く薬剤師について簡単にご紹介していきます。自衛隊で働く薬剤師は、正確には「薬剤官」と呼ばれる職種で、自衛隊の中で衛生部門の仕事を主に担当します。薬のプロフェッショナルであると共に、幹部自衛官としても活動する事になる為、非常に希少な人材と言えます。しかしその分枠も狭く、薬剤官になる道は非常に険しい道となっています。本記事では、薬剤官の具体的な仕事内容や、薬剤官になる為の流れについて、詳しくご紹介していきますので、是非最後まで読んで頂けると幸いです。
自衛隊薬剤師の男女比

薬剤官の男女比は正確には公表されておらず、具体的な数値を知ることはできません。過去に公表されている最も古いデータは平成19年のデータで、そのデータによると薬剤官の女性比率は24.7%となっています。
しかし時代とともに自衛隊全体の女性比率も向上している傾向にあるため、薬剤官の女性比率も多少向上していると考えられます。とは言え、薬剤官は母数自体が非常に少ないですし、向上しているとは言っても自衛隊全体の女性比率は6〜7%程度であるため、薬剤官の女性の人数もそう多くはない、と考えるのが自然です。
一般的な職場と比べたら、女性の割合は非常に小さい職場だと言えるでしょう。
女性でも自衛隊薬剤師になれる!

上記の通り、女性の薬剤官は決して多くはありませんが、女性が全くいないというわけではありません。女性の薬剤官で活躍している方もいるため、女性でも目指すことができる職業です。
しかし、薬剤官とは言え自衛隊の構成員の一員であるため、他の隊員と同様、厳しい訓練を受けなければならない点はきちんと認識しておきましょう。女性がいないわけではありませんが、女性が少ないのは事実です。それだけハードな職場だと考えましょう。
自衛隊薬剤師の年収事情

薬剤官の給与は、階級に応じておよそ400万円〜800万円の間となっています。
自衛隊員の給与は「防衛省の職員の給与等に関する法律」で規定されている為、どの階級でどの程度の給与がもらえるのか、調べることが可能です。
ちなみに初任給は247,500円となっています。一般的な職場と同様、賞与は年2回、昇給は年1回となっています。
努力して実績を積み、階級を上げていくことができれば、それに応じてより高い給与を得られるようになります。また住宅手当や扶養手当等、一般的な職場と同様の手当に加えて、職務や職域に応じた手当や、航空手当、航海手当等、配属に応じた自衛隊独自の手当制度がある点も魅力的です。薬剤師全体の平均年収が500万円前後であることを考えると、薬剤官は階級次第で平均年収を大きく超えることができる職場だと言うことができます。
自衛隊薬剤師ってどんな仕事してるの?

続いて、薬剤官の具体的な仕事内容についてご紹介していきます。自衛隊の衛生業務を担当する事が多いですが、その他にも幹部自衛官としての仕事など、幅広い仕事を担当することになります。
自衛隊員の健康管理

自衛隊員の健康管理を行います。
怪我や病気に備えて、自衛隊員が健康に任務に従事できるよう、裏方として支援します。
自衛隊員が日本にいるときはもちろん、海外に派遣されて任務を行うときも同様なので、薬剤官も海外に派遣されることがあります。その際には、日本から持ち込んだ医薬品の管理だけではなく、補給物資の衛生検査等も実施します。自衛隊員は集団で活動することがほとんどである為、集団感染や食中毒には特に注意が必要です。
何でもかんでも薬を処方すれば良いと言うわけではなく、症状の重さを適切に見極め、持ってきた医薬品が尽きないよう、処方計画を練る必要があります。
医薬品の管理

上でご紹介した派遣先での医薬品の管理に加えて、基地や駐屯地での医薬品の管理も行います。
任務や訓練の予定から、必要なタイミングで医薬品が不足しないよう、適切な仕入れを計画します。また使用した医薬品の数と残っている医薬品の数がずれていないかといった、医薬品の在庫管理も行い、不正な使用を防止します。
自衛隊病院に勤務

自衛隊の駐屯地内にある病院に勤務し、隊員やその家族の健康管理を行います。
他の病院や薬局での勤務とほとんど同じ仕事で、処方箋をもとに医薬品を提供したり、服薬指導を実施したり、健康診断を行ったりします。海上自衛隊の配属の場合は、航海中の隊員の健康管理のために航海に帯同することもあります。
衛生隊員としての仕事

衛生隊員として、災害や戦争など、有事の際の対応も行います。
有事の際に自衛隊員が必要とする防護服やマスク、医薬品や衛生資材を調達し、それらを現場で提供します。また被災者の健康支援も行います。被災者の中には病気を持っている人や服薬中の人も多くいるため、そういった人々が被災地でもなるべく健康を損なわないよう、現地での服薬指導や健康相談を行います。薬剤官は普段から、こういった有事の際の対応に向けた訓練をすることになります。
幹部自衛官としての仕事

災害派遣や国際貢献活動において、現場の司令塔として、衛生部隊の指揮官やその補佐を担うこともあります。
薬剤官は幹部自衛官としての扱いになる為、現場の指揮の方法も習得していく事になります。
自衛隊薬剤師になるメリット

次は、薬剤官として働くメリットを見ていきます。薬剤官は自衛隊の一員であるため、日頃からきつい訓練を受けることになります。その分一般的な職場と比べて大変な職場だと言えますが、その上で薬剤官として働くことにはどのようなメリットがあると考えられるでしょうか。
もちろん人によってメリットを感じる部分は違うと思いますが、一例としてご紹介します。
手厚い福利厚生を受けることができる

薬剤官は、「特別国家公務員」という立場に該当するため、手厚い福利厚生を受けることができます。
具体的には、団体保険制度や防衛省生活協同組合といった保険制度や、一般的な銀行よりも有利な条件の貯金制度や貸付事業、年金制度があります。また駐屯地内に住んでいる限り、基本的に家賃は非常に安く、光熱費や食事代も無料となります。防衛省共済組合直営施設(宿泊施設・野球場・テニスコート、保養施設など)を利用することもでき、一般的な職業と比べても非常に手厚い内容の福利厚生になっています。
公務員扱いのため給料が保証されている

福利厚生と似ていますが、薬剤官は公務員であるため、倒産や介護によって職を失うリスクがほとんどなく、給料が保証されています。安心して将来設計を考えることが可能です。
病院薬剤師と同じような働き方が可能

配属先によっても異なりますが、配属先次第では病院薬剤師と似たような働き方をすることも可能です。働き方が余り変わらないのであれば、給与や福利厚生が充実している薬剤官の方が魅力的な仕事だと言えます。
体力作りができる

薬剤官は自衛隊員として日頃から訓練に取り組む必要があるため、一般的な職業に比べて運動量が圧倒的に多くなり、体力作りができます。
基本的に社会人になると運動する機会は減ってしまい、健康リスクが高まる為、普段の業務として運動ができる薬剤官は健康面でもメリットがある職場だと言えます。訓練はハードなので、捉え方次第ではデメリットと思う人もいるとは思いますが、将来的な健康を考えるとその訓練もメリットと言えるでしょう。
貴重な経験が詰める

薬剤官は募集人数が少ないため、限られた人材しかなることができない、珍しい職業です。
業務内容自体も、自衛隊員として訓練しながら薬剤師としての業務も行う、と珍しいものになっており、唯一無二の経験を積むことができる職業だと言えます。せっかくなら人と違う珍しい経験がしてみたい、と考えている人にとって、薬剤官という仕事は魅力に溢れているでしょう。
自衛隊薬剤師になるデメリット

もちろん、薬剤官はメリットばかりの仕事ではありません。訓練は大変ですし、自衛隊員として厳しい規律の中で働いていくことになります。考えられるデメリットを、ここでご紹介します。
プライベートとの両立が難しい

薬剤官の仕事は非常に忙しいため、正直なところプライベートとの両立は難しいと言えます。
自衛隊病院や駐屯地の勤務では夜勤や当直を命じられることもありますし、災害が起きた際には休日であっても即座に駆けつける必要があります。海外旅行や遠方に行く際には事前の申請が必要ですし、休日であってもすぐに連絡がつくようにしておかなければならない等、プライベートを制限されている一面があることは否めません。休日を充実させたい、家族との時間を大切にしたい、と考えている方にとっては、ストレスの多い職業になってしまうでしょう。
状況によっては土日出勤がある

上の内容と似ていますが、状況や配属次第では土日出勤になることも多くあります。有事の際には当然土日や祝日は関係ありませんし、業務の予定次第では土日が休めないこともあります。振替休日は取得可能ですが、ある程度不規則な生活になってしまうことは覚悟しておいた方が良いでしょう。
転勤が多い

薬剤官は母数が少ない職種であるため、必要に応じて転勤を命じられることも多くあります。配属次第では半年~数年の航海に同行したり、海外へ派遣されることもあります。生活の基盤地点を決めて安定した生活を送りたい、と考えている人は、避けた方が良い職業です。
体力面や精神面での忍耐が必要

日頃の訓練はハードですし、自衛隊の規律は非常に厳しく、初めの頃は叱責されることも頻繁にあるでしょう。
もちろん慣れも大きいですが、一般的な職場に比べて厳しい部分が大きいのは事実です。また被災地や海外に派遣された際には、慣れない環境で長期間働かなければならないため、それに耐えうる体力が必要ですし、被災地や怪我人を見ることもある為、精神的な負担もあります。心身共にタフな人物でないと、薬剤官として働き続けることは難しいでしょう。
必ず採用されるとは限らない

薬剤官を目指して勉強したとしても、枠は非常に少ないため、合格できる可能性は高くは有りません。他の職場で働きながらの勉強となると、その可能性は更に下がります。薬剤官を目指す場合は、合格できなかった場合のプランもしっかりと考えておく必要があります。
薬剤官として実際に働くまで時間を要する

薬剤官として採用されるには、まず入隊時期の一年前の試験に合格する必要があります。
おおよそですが、毎年5月に一次試験、6月に二次試験、7〜8月に合格発表、という日程のため、長い時間をかけて薬剤官になる為の準備をする必要があります。
また合格してすぐに薬剤官として働けるわけではなく、合格して入隊した場合、その後1年間は「初級幹部」としての扱いになり、自衛隊幹部候補として知識や技能を習得します。この期間は戦闘訓練等のハードな訓練も行われます。約1年に及ぶ訓練が終わったら、更にもう1年「薬剤実施研修」を行います。実際の現場を通して、薬剤官としての働き方を学んでいきます。
これらの段階を全て終えたら、ようやく薬剤官として働くことが可能になります。薬剤官として働き始めるまでには、長い時間が必要なのです。
自衛隊薬剤師に必要なスキルとは?

薬剤官は自衛隊幹部としての仕事と、薬剤師としての仕事を両方行う必要があります。両方の仕事を適切に行うためには、どのような素質が求められるのでしょうか。
①的確な判断力

薬剤官は幹部自衛官でもある為、いずれは人の指揮をする立場になります。その時必要になるのは、どのような状況でも部隊を牽引する冷静で適切な判断力です。
日頃の業務から、状況や症状、残りの在庫に応じて使用する医薬品を適切に判断する必要がありますし、部隊を指揮する場面では、判断次第で部隊や他の自衛隊員の状況を大きく左右する為、より責任の重い判断を任されます。それらのプレッシャーに耐え、いつでも適切な判断を下せるよう、精神力も持ち合わせている必要があります。
②臨機応変な対応力

特に有事の際には、現場では時々刻々と状況が変化するので、想定通りの状況にならない事の方が多いでしょう。そのような場面であっても、想定外の事態に困惑するのではなく、その状況を加味した上で最善の選択肢を考えることができるような、臨機応変な対応力も大切です。
災害の多い日本では地震や台風、噴火など、様々な災害が発生しますし、国際情勢も複雑化している為、海外へ派遣される機会も増えています。そのような多様な状況の中、どのような任務を任されても最善の行動を考えられるような、臨機応変な対応力が求められています。
③責任感

薬剤官は、場合によっては隊員や一般市民の健康や生命に直結するような任務を行うことがあります。そのような場面では、何があっても任務をやり遂げる、という責任感が必要になります。自分に任された任務の重さをしっかりと感じ、その上でそのプレッシャーに負けることなく、やるべき事を責任を持ってしっかりとやり遂げられる人材が求められています。
自衛官薬剤師になるまでの流れ

薬剤官になるまでの具体的な流れをご紹介します。薬剤官を目指す方は、しっかりと過程やスケジュールを確認して、試験に備えましょう。
自衛隊幹部候補生採用試験・薬剤科とは?

薬剤官を目指す場合は、「自衛隊幹部候補生採用試験・薬剤科」という試験に合格する必要があります。応募資格として、「入隊日までに薬剤師国家資格を所持していること」、「年齢が28歳以下であること」、「日本国籍であること」が求められます。
内容として、一次試験は一般教養と専門分野に分かれており、専門分野では、薬学の専門的な内容が出題されます。二次試験では、小論文試験と口頭試験(面接)に加えて、「自衛官として役割を全うできる身体機能を有しているかどうか」を調べる為の身体検査が行われます。これらの内容をクリアすることで、薬剤官になることができます。
Step1:地方協力本部の情報をチェックする

まずは自衛隊地方協力本部に行き、公式の情報を入手することをおすすめします。インターネットでも情報収集は可能ですが、地方協力本部であれば担当者に質問することも可能であるため、より確実に情報を集めることが可能です。
Step2:自衛隊や陸・海・空の種目について知る

募集は陸、海、空の3つに分かれて行われるため、どれに応募するかを決めておく必要があります。それを決めるために、募集案内や採用要項を見たり、地方協力本部の担当者に質問したりするなどして、それぞれの違いについての情報を集めましょう。
Step3:自衛隊幹部候補生の試験に応募する

募集は毎年3月〜5月の間に行われます。事前に集めた情報に従い、試験への応募を行いましょう。インターネットを利用して応募する方法と、最寄りの自衛隊地方協力本部に郵送する方法があります。
Step4:受験および合格発表

受験後、合格発表が行われます。試験は1回と2回があり、1回目受験の場合は7月頃、2回目受験の場合は9月頃に合格発表となります。
Step5:入隊後「初級幹部」として、2年間の訓練と実務研修を受ける

合格した次の4月より、初級幹部として2年間に渡って訓練と実務研修を受けます。それらの訓練、研修を経て、薬剤官として働き始めることになります。
自衛隊薬剤師になるために知っておきたいこと

薬剤官を目指す上で知っておいた方が良いことをピックアップしてご紹介します。薬剤官に興味を持たれた方は、見落としがないよう、念入りに確認しておきましょう。
薬剤科幹部候補生の厳しい応募資格とは?

先程もご紹介しましたが、「自衛隊幹部候補生採用試験・薬剤科」には受験資格があります。
まず、自衛隊幹部候補生採用試験の受験資格として、「20歳以上28歳未満で大学を卒業または卒業見込みの者」、「日本国籍を有する者」という2つがあります。更に薬学科の受験資格として、「6年制の薬学部を卒業、または卒業見込み」、「入隊日(採用試験に合格した次の4月1日)までに薬剤師国家試験に合格」という2つがあります。
6年制の薬学部の卒業が早くても24歳時点であることを考えると、受験するチャンスは非常に限られています。何度でも挑戦できるものではないので、覚悟を持って入念に準備しておく必要があります。
薬剤科幹部候補生の試験内容の詳細

試験は一次試験と二次試験に分かれています。
まず一次試験では、先程も軽く触れた通りですが、一般教養と専門科目が出題されます。一般教養では人文科学、社会科学、自然科学、英語、文章理解、判断推理等の問題が出題されます。専門科目では薬学の専門分野が出題範囲となります。
続いて二次試験では、小論文、口頭試験(面接)、身体検査が行われます。身体検査では身長、体重、視力、聴力、色覚、歯でそれぞれに合格基準があり、また、身体健全であること、慢性疾患や感染症に罹患していない、四肢関節などに異常がない、開腹手術の既往がない、刺青や自殺企図の既往がない、妊娠していない、精神疾患に罹患していない、等の複数の条件があります。他の試験がどれだけ優秀でも、身体検査の結果で不合格となる事もあり得る為、油断は禁物です。
一次試験や小論文については過去問のような教材が市販されているため、そういった教材を利用することで合格率を上げることが可能です。
自衛隊幹部候補生の教育カリキュラム

採用試験合格後の3月~4月が入隊時期となり、入隊後に初等教育が行われます。(正確には各自衛隊の薬剤科幹部候補生学校に入学する形になるため、入隊ではなく入校が適切)学校での教育機関は各自衛隊によって異なり、陸上自衛隊は陸上自衛隊は約39週間(約9ヶ月)、海上自衛隊は約1年間、航空自衛隊は約34週間(約8ヶ月)となっています。
学校では初級幹部として必要な知識、技能を学びます。一般的な隊員と同様、行軍訓練、戦技訓練といった訓練も行います。海上自衛隊の場合はおよそ半年間に渡り、航海の訓練も実施されます。
薬剤科幹部候補生学校を卒業後は、自衛隊中央病院で約1年間、陸海空の自衛隊合同で薬剤実務研修が行われ、臨床薬学の実習、講義を行います。これらの研修を経て、それぞれの自衛隊で薬剤官として働くことになります。
薬剤科幹部候補生はどうやってキャリアアップするの?

薬剤官としてキャリアを上げていくことは階級を上げていくことと同義です。
階級は一朝一夕で上がる物ではないため、日々の積み重ねが大切になります。日々の業務に真面目に取り組み、コツコツと実績、評価を重ねていきましょう。幹部自衛官扱いとなる為、一般的な自衛隊員と比べて昇級スピードは早くなっています。
まとめ

- 女性でも自衛隊薬剤師を目指すことは可能であるが、応募条件や試験合格には厳しい条件があり、かなりの狭き門である。
- 自衛隊薬剤師には厳しい世界だからこそのデメリットはあるが、高収入・高待遇であることや他の業種では培えない貴重な経験をすることができる大きなメリットがある。
- 責任感・判断力・対応力を兼ね備えたリーダー的気質の薬剤師におすすめの職業!
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